シェアサイクルの導入と『自転車の街・荒川』の復活
目次
- シェアサイクルの実証実験が開始されています
- 自転車の街・荒川
- 観光施策としての自転車活用
- シェアサイクルの今後の展開
シェアサイクルの実証実験が開始されています
シェアサイクルの実証実験が開始されています
以前より荒川区に提案していたシェアサイクルが8月1日から、一部エリアで導入されています。
これは、本格導入に向けた実証実験として、令和元年8/1〜令和3年3/31の1年8ヶ月の期間で行われます。
荒川区のシェアサイクル導入の契機は、平成29年5月に施行された『自転車活用推進法』でした。
この『自転車活用推進法』は、要旨としては「各自治体がそれぞれの地域の実情に応じて自転車施策を打ち出しなさい。」といった内容の法律で、自転車の活用によって、環境の改善(低炭素社会の実現)・観光の促進(地域の活性化)・健康の促進(慢性的な運動不足の解消)等を期待するものになっています。
この『自転車活用推進法』を基に、荒川区はシェアサイクルを選択し、その導入を目指してきました。
これまでの自転車関連の施策というと、放置自転車対策、事故防止など負のイメージへの施策が多かったのに対し、より積極的に有効的に自転車を活用することで、荒川区の地域環境の向上、区民の生活向上を目指す試みになっています。
自転車を取り巻く状況としては、一人一台以上所有している現状の中で、単なる移動手段以上の効能を探っていこうという試みでもあります。
自転車の街・荒川
さて、振り返ってみますと、そもそも荒川区と自転車とは浅からぬ関係があります。
かつて、昭和30年頃からでしょうか、荒川区は『自転車の街』でした。
荒川区内には広く、数多の自転車メーカーとその関連企業が存在していました。
その数、実に約300社を数え、『西の堺』と並び『東の荒川』の自転車産業はまさに地場産業でした。
しかし、時代の流れと共に、メーカーは郊外へと拠点を移し、工場も郊外、あるいは海外へと移っていきました。
今や荒川区内には、その隆盛は見る影もありません。
それでは、かつて荒川と共に双璧をなした堺市の今はどうでしょう。
なんと堺市は、自転車博物館があったり、生活の一部としての自転車を盛り上げたり、『自転車の街』として街づくりをしているではありませんか。
市役所の中には、独立した所管の部署として『自転車まちづくり部』があります。
特に行政による街づくりの施策では、この独立した部署があるというのは大きいと思います。
例えば、今回荒川区で実証実験の始まったシェアサイクルは『環境清掃部』の管轄で導入されました。
区のホームページを見ていただければわかると思いますが、『環境清掃部』による「省エネ・地球温暖化対策」の一環としての施策ということになります。
つまり、現時点では荒川区としては自転車推進の目的とは、Co2削減になります。
『低炭素地域づくりに基づく環境交通の推進』としてシェアサイクルを導入したということになります。
これはこれで大いに意義のあることだと思っています。
そもそも私も自転車推進の第一歩としてこれを推したわけですし、導入に尽力してくれた当該管轄部署の職員たちには本当に感謝しています。
ただ、私の最終的な目標はもう少し先にあるのです。
その目標というのが、『自転車の街・荒川』の復活なのです。
そのためには、環境・観光・健康といった縦割りを超えた、自転車の持つ効果効用を横串に最大限活かす施策を取るべきだと考えています。
最終的には、堺市のように、自転車活用に特化した専門の部課を区役所に創設し、自転車を主軸に環境・観光・健康と、現行組織の管轄を横断的・包括的に施策を企画・実行できるような体制を取りたいとさえ考えています。
観光施策としての自転車活用
私は、特に観光施策に於いて、自転車はより有効に活かせるはずだと考えています。
私が『自転車の街・荒川』で考えているのは、かつての地場産業を根拠に、往年の自転車文化を懐古するものではありません。
むしろ、荒川区という地域の特性を生かした新しい自転車の活用を実践する地域として、荒川区に自転車を根付かせたいと考えています。
すでに自転車を趣味として楽しんでいらっしゃる方には、当然の事として広く知られていることだと思いますが、山の手周辺の地域、特に荒川区を含む23区の東側は「平坦」なんです。
そんなエリアである我が荒川区ですから、シェアサイクルを積極的に活用いただければ、日常の移動手段の選択肢としてきっと有効だと思います。
特に、区内を移動するのに、必ずしも他の公共交通機関の交通網は十分に便利であるとは言えないのが現状です。
一方で、区内は広域に渡って魅力的な商店・飲食店が点在していますから、小回りのきく自転車での移動は、区民の皆様にとって、慣れ親しんだ荒川区でも新しい発見や体験があるはずです。
そんな区内の回遊性の向上と、それによって起こる地域活性化も、シェアサイクルに期待してもいい効果効能の一つだと思います。
また、区外からの集客にも大いに活用できるはずです。
「平坦」は自転車という乗り物を考えた時、ある意味でもっとも大きなメリットです。
山の手は文字通り「山」ですから、坂が多く、気軽に自転車を楽しむのに向いているとは言い難い環境ですが、荒川・台東・墨田・江東・足立・葛飾・江戸川と、山の手より東側の東京はほとんどアップダウンがなく、気持ちよく自転車に乗るのにとても適しているエリアです。
その中でも、荒川と隣接する台東・隅田は上野・浅草や東京スカイツリーなど、すでに観光地として集客力のあるエリアとなっています。
そこから荒川区まで、点在する観光スポットを辿る形で、サイクリングに適した気持ちのいい道路を整備して、人の流れを作ることは現実的だと考えます。
少なくとも、特に距離に関して言えば、自転車にとって全く無理のない距離です。
もちろん、荒川区まで人の流れを作るための、動機付け(集客力のあるスポットの新設なのか、既存の観光資源の再発見なのか、道路の整備等インフラなのか、あるいは各種メディアによる観光ガイドや区の情報発信なのか、あるいは専用端末やスマホアプリなどのツールの開発・貸与・配布なのか、あるいはシェアサイクルのより発展的な活用方法なのか)、集客に繋げるために必要な施策の可能性はたくさんあると思います。
いずれにせよ、自転車施策に特化した専門の部課があれば包括的に施策を研究・実行できます。
それによって期待できる効果も、決して小さくはないはずです。
私、個人と致しましても、より積極的な自転車施策のためにも、堺市や宇都宮市他等、有効活用に成果をあげている自治体を視察したいと考えておりますし、自転車先進国等、海外の事例等も調査していきたいと考えております。
シェアサイクルの今後の展開
現在、実証実験として、ポート17箇所、109台のシェアサイクルが区内に設置されています。
本格導入時、あるいは後には近隣区とのリンクも予定されています。
身近な乗り物である自転車ですが、シェアサイクルの「片道だけで乗り捨てができる」という点は、多くの人にとって新たな可能性を持った移動手段になると思います。
是非、積極的にご利用頂きまして、まずは何よりシンプルに楽しんで頂きたいと思っております。
願わくば、情報・ご意見等フィードバックも頂き、ただ設置するにとどまらず、その先の展望を持った継続的な施策にしていきたいと考えております。